#97
ミュージアムに香る違和感(いわかん)
2026.02.27
- 2月。カレンダーを見ればもう月の半ばだが、まだまだ春は遠く寒い日が続いている。今日は久々に、1日まるごと予定のないオフだ。探偵(たんてい)という仕事柄(しごとがら)なかなか完全な休みはないが、今日はアポイントも近々のタスクも特にない。
だからといって部屋でぼんやり過ごす気にもなれず、コートを羽織って外に出た。向かった先は隣町(となりまち)の自然博物館。なぜか昔から好きな場所なのだ。
恐竜(きょうりゅう)の骨格標本や、地層を切り取った展示、ガラスケースに並ぶ鉱石や昆虫(こんちゅう)たち。どれももう動かないし、喋(しゃべ)らない。だがそこには確かに「かつてあった時間」が詰(つ)まっている。日頃(ひごろ)から嘘偽(うそいつわ)りに囲まれた仕事をしていると、こういう無言の存在がやけに心地(ここち)いいのかもしれない。
館内は平日にもかかわらず、それなりに人が入っていた。子どもを連れた家族、ノートを片手に熱心に展示を読む学生、展示よりお互(たが)いの顔を見ているカップル。自然博物館をデートコースに選ぶとは、なかなか渋(しぶ)い。入口近くの巨大(きょだい)な地球儀(ちきゅうぎ)を横目に、そんな人々を眺(なが)めていると、不意に背後から声をかけられた。
- ???
- 今日の博物館の中、何か変わったところがあると思いませんか?
- 振(ふ)り返ると、白衣姿の学芸員が立っていた。どこかいたずらっぽい笑(え)みを浮(う)かべている。
- 学芸員
- ヒントは、この謎(なぞ)を解いてみてください
- そう言って、彼(かれ)は1枚の紙をさも当然のようにぼくに手渡(てわた)してきた。
捜査を開始する