#100
探偵(たんてい)と、
なんだかさえない1日
2026.05.22
- 人にはなぜか、なんだか何もうまくいかない時期というのがある。ぼくはまさに今がそれだ。
仕事もささいなミスが続いてスランプ気味だし、クライアントとのコミュニケーションがなかなか思い通りにいかずトラブルとストレスの種が増えていく。病気という訳でもないが少し体調が悪い気もして、朝の目覚めもどこか重たい。コーヒーを飲んでも頭がはっきりせず、集中力が長く続かない。ほしいものが店にたまたまなかったり、信号にやたらと引っかかったりと、最近どうやら運も悪いみたいだ。その1つ1つは大したことではないはずなのに、気付けばそれらが心に蓄積(ちくせき)し、考えもネガティブな方向へと傾(かたむ)いていく。
机の上には未整理の書類が積み重なっている。普段(ふだん)ならその日のうちに片付けるのに、今日はどうにも手がのびない。ペンを持っても考えがまとまらず、ただ時間だけが過ぎていく。こういうときは無理にあらがわない方がいいのかもしれない。少し休むか、それとも気分転換(てんかん)に外に出るか…… そんなことをぼんやり考えていたとき、ふとインターホンが鳴った。
- とある探偵
- 仕事か
- 気分は晴れないが、商売はちゃんとやらなければならない。ぼくはゆっくりと立ち上がり、玄関(げんかん)へ向かった。ドアを開けると、依頼人(いらいにん)がきちっとした姿勢でまっすぐ立っていた。
- 依頼人
- とつぜんすみません。この暗号を解いていただきたくて…
- 依頼人はやけに落ち着いた雰囲気(ふんいき)をまとっており、感じの良いほほえみをこちらに向けている。ぼくは差し出された紙を受け取り、少しだけ気持ちを引き締(し)めた。
捜査を開始する