今年も残すところあと数時間となった大晦日(おおみそか)の夜、ぼくは近所の寺に来ていた。なんでもこの寺では除夜の鐘を一般客でもつくことができるとのことで、108回を1人1回ずつ、つまり合計108人で順番につくのだそうだ。ぼくはこれまで知らなかったのだが、けっこう地域の人気イベントになっているようで、除夜の鐘つきの権利は毎年争奪戦になるらしい。ちょっと早めに到着したつもりだったが、境内には既に108人を優に超えるであろう人々が集まっていた。

住職

それではこれより、除夜の鐘つきの整理券配布を開始します!

境内にマイクで住職の声が響き渡ると、集まった人々が静まり返る。夜の寺の雰囲気も相まって、なかなか妙に荘厳だ。

住職

今年の整理券は、“謎解き”をクリアされた順に配りたいと思います!

な、謎解きだと? 周りも急にざわめき出した。確かに、整理券は単なる先着順ではなく毎年一風変わったやり方で配布されるとはウワサに聞いていたものの、大晦日の寺で謎解き納めをすることになるとは。いやしかし、これはぼくにとってかなり有利なのではないか? あたりではちらほら、自信なさげなため息も聞こえてくる。

住職

さっそく始めます! まずは賽銭箱(さいせんばこ)に書かれた謎を見て、それが表す場所に行ってください

と住職が言い終わるやいなや、一斉に賽銭箱の周りに人だかりが出来上がった。ぼくも遅れを取りつつも何とか人混みをかき分け、ようやくそこに描かれた謎を見ることができた。

捜査を開始する