#102
怪しすぎる隣人にご注意
2026.07.24
- ぼくの仕事場の隣に、つい最近新たなテナントが入ったようだ。もっとも、「入ったようだ」というのは少し曖昧な表現かもしれない。引っ越し作業らしきものは見かけたし、夜になると部屋の明かりがついていることもある。けれど肝心の看板は出ておらず、何の店なのか、あるいはどんな会社なのかもまったくわからない。
この雑居ビルには小さな事務所や店舗がいくつか入っているが、普通であれば入口に社名や店名くらいは掲げるものだろう。しかし隣の部屋のドアには何も書かれておらず、窓には薄いカーテンがかかっていて中の様子も見えない。人の出入りもあまり見かけないものだから、自然と気になってしまう。
そんなある日のこと。昼下がりになってコーヒーが切れていることに気付いたぼくは、近くの店まで買いに行こうと事務所のドアを開けた。すると、まるでタイミングを合わせたかのように、隣の部屋のドアも同時に開いた。その人は深くフードをかぶっていて、顔がほとんど見えなかった。両手をポケットに入れたままゆっくりこちらへ歩いてくるが、どう見ても怪しい。映画やドラマなら、このあと何かよくない取引が始まりそうな雰囲気である。
- 隣人
- あの……どうも……
- 相手はそう声をかけてきたのだが、驚くほど小さな声だった。いや、小さいというより、何を言っているのか半分くらい聞き取れない。ぼそぼそと話すので内容がよくわからないのだ。
そして次の瞬間、その人物はポケットから小さなボトルを取り出した。中には何やら液体が入っている。ぼくは思わず固まった。
- とある探偵
- ええと……これは?
- そう尋ねると、相手は再び何かを説明してくれたのだが、やはり聞き取れない。ただ、ボトルに紙が貼られていることだけはわかった。そこには、謎解きのようなものが書かれていた。
- 隣人
- まずはこちらを……
- おそらくそう言ったのだろう。ぼくはボトルを受け取り、貼られた謎へと目を向けた。
捜査を開始する