もうすっかり夏らしくなってきた今日この頃は、夜に外を出歩くにはぴったりの時期だ。これからまさに暑くなろうとしている季節独特の高揚感が、ぼくの探偵事務所の近くにある駅前通りをもにぎわせていた。

ある日の仕事終わり、どこかで夕飯でも食べて帰ろうかと通りを歩いていると、老人が机を構えてちょこんと座っていた。ちょっと不気味なたたずまいだったのでそのまま素通りしようとしたが、…なんだかどうもどこかで会ったことがあるような気がする。歩みを止めて思い出そうとしていると、いきなり老人の方から話しかけてきた。

老人

どうも、こんばんは

思いがけず声をかけられ、少しびっくりする。

とある探偵

あの、つかぬことをお伺いするんですが、以前どこかでお会いしたことがありませんか?

老人

うむ。わしはお主と以前会ったことがあるぞい

この妙な口調にもどこか聞き覚えがある気がする。

とある探偵

うーん… 失礼ですが、どなたでしたっけ?

老人

なんじゃ、何ひとつ覚えていないのか…。ではこの謎を解くがよい! きっとわしのことを思い出すヒントになるじゃろう

そう言って老人は電子手帳のような端末をぼくに向けて見せてきた。一体何なんだこの老人は。

捜査を開始する