#101
閉じられないWeb広告
2026.07.03
- 最近は、Web上の広告もずいぶんと凝(こ)ったものが増えてきた。
ひと昔前はただバナーがはられているだけだったのに、今では動画が流れたり、スクロールに合わせて動いたり、まるで小さな作品のようなものまである。もっとも、そのすべてが歓迎(かんげい)されているわけではない。閉じるボタンが妙(みょう)にわかりにくかったり、おしたつもりが別のページに飛ばされたりと、なかなか油断ならない。その一方で、中には妙に内容が気になってついクリックしてしまうものもある。広告を出す側の人々は、とにかくあの手この手でユーザーの閲覧(えつらん)数をかせぐために日夜、試行錯誤(しこうさくご)をくり広げているのだろう。
6月のある日、ぼくは特に目的もなくただ事務所でネットをながめていた。窓の外では、夏の始まりらしい風がふいている。ニュースサイトを流し読みし、気になった記事をいくつか開いては閉じる。途中(とちゅう)でコーヒーをいれ、また椅子(いす)にもどる。まるで取り留めのない時間を過ごしていた、そんなときだった。ふいに画面のはしに奇妙(きみょう)なポップアップ広告が現れた。真っ赤な背景に、黒い文字ではっきりとこう書かれている。
“あなたは…この謎(なぞ)が解けますか?”
まったく動きのない、シンプルでややレトロなデザイン。下の方には、図形と文字が組み合わされた謎解きの問題。そしてどこにも閉じるボタンが見当たらず、消すことができないようだ。
- とある探偵
- ……ちょっと不気味だな
- そうつぶやきながらも、ぼくの手はすでにマウスをにぎっていた。
警戒心(けいかいしん)はある。だが、それ以上に好奇心が勝っていた。
一度見てしまった以上、解かずにはいられない。それがたとえ広告だとしても。
ぼくは椅子に深くすわり直し、コーヒーを一口飲んでからその問題にじっくりと向き合った。
捜査を開始する